不安障害は突然何の理由もなく、あるいは些細なきっかけで強い不安に襲われる病気です。正当な理由があって陥る不安は、誰にでもある正常な感情ですが、人間以外、例えばネズミ等の下等な動物にも不安は存在します。
ここで言う正当な理由とは誰もが納得するであろう「試験直前」や「人前で喋る」等々を指しますが、その様な正当な理由がないにも拘らず強い不安に陥ってしまう、これが不安障害です。
原因は不明ですが、脳内神経伝達物質(GABA等)の機能不全と考えられています。
不安障害の主症状はいうまでもなく不安です。
不安とは、「じっとしていられないような強い苦しみを伴った感情」と定義されます。
不安障害には、自律神経系の症状を伴うことが多いことが知られています。これは、脳内の不安を感じる中枢と内臓を支配する神経である自律神経を司る中枢が密接に結びついている為です。
自律神経症状には動悸、息苦しさ、血圧変動、発熱、発汗、口喝、腹痛、下痢、頻尿等があります。
いわゆる「自律神経失調症」と診断される方の多くは背景に不安障害が存在しています。
精神科の他の病気と同様、薬物療法と精神療法が併用されることが多いです。
1 薬物療法
従来ベンゾジアゼピン系抗不安薬が主流となっていました。 欧米では、より副作用・依存 性の少ないSSRIの使用が推奨されています。SSRIは、元々抗うつ薬として開発されました が、強い抗不安作用を有しています。
1 精神療法
これまで様々なタイプのカウンセリングが試みられて来ました。 当院で一部導入されているマインドフルネスも不安障害には有効とされています。マインドフルネスとは日本の禅をバックグラウンドとした精神療法の一種です。
マインドフルネスについては当院ホームページでも別個に解説していますのでそちらをご覧ください。
前述の通り、本来、不安は誰にでもあるごく当たり前の感情です。そもそも不安は生体防御反応のひとつであり、「不安があるからこそ我々人類は生存競争を勝ち抜いて来られた」とさえいえるものです。しかしながら、「TPOにそぐわない不安」ともいえる不安障害の存在は日常生 活に多大な支障を生じ得るものであります。一 方、今日の医療において不安障害は適切な治療により速やかな回復が望める疾患となっています。御自身に思い当たるフシが少しでもあれば、まずは一度外来受診をお考えいただければ幸いです。